社長ブログ

自粛警察を生む日本と台湾の違い

皆さま、おはようございます。インターネット写真販売のふぉとすてっぷ、代表の嶋です。

こんなに大変な事態なのに、どうして国民の気持ちが一つになれず、分断が生まれてしまうのでしょう。自粛警察行為のニュースを見ると暗い気持ちになってしまいます。正義感に基づく行動だから余計にたちが悪いのですが、「コロナで死ぬ前に自粛で殺されてしまうので働かざるを得ない人」「家賃を払うためにお店を開けて少しでも収入を得なければならない人」に対して、自分は我慢しているのにけしからんというのは、あまりに自分本位ですね。

こんな悲しい分断を引き起こしてしまう原因は、政治の至らなさです。隣の芝は青いと言いますが、台湾の天才IT大臣、オードリー・タン(唐鳳)氏を紹介する記事を読んで、まず「日本にもこのような人がいるはずだ」ということ、そして残念ながら「今の日本ではこのような人は活躍させてもらえない」ということを考えました。以下に紹介するオードリー・タンさんの記事を読むと、台湾という国が日本よりはるかに進んでいることがわかります。記事の後半の「自分と違うものを許容する社会と、国や自治体を政治家任せにするのではなく、自分たちが参加して作るのだという国民一人ひとりの強い当事者意識。」という言葉が響きました。記事を書いたのは、近藤 弥生子さんという台湾台北在住の編集・ライター。nippon.comの記事から転用しました。

インタビューで垣間見たオードリー・タンの素顔

台湾のデジタル大臣、オードリー・タン(唐鳳)氏に今、日本から熱い視線が注がれている。筆者は2019年12月に公開されたYahooニュースの特集記事『「国民が参加するからこそ、政治は前に進める」――38歳の台湾「デジタル大臣」オードリー・タンに聞く』で彼女へのインタビューを行った。そこで垣間見たオードリーさんの素顔とは。

台湾のデジタル大臣

台湾のデジタル政策を担当するオードリーさんは、日本の無任所大臣に相当する行政院政務委員を務める。

主に「開かれた台湾政府」の促進を担当しているほか、社会問題に対する革新的な解決法を見い出す「ソーシャル・イノベーション」や「若者たちの政治参加」実現のために政府関連機関のデジタル化のバックアップを行ったり、民間の専門家たちが社会問題の解決に関わるプレゼンテーションを競い合う「総統盃ハッカソン」を開催している。

彼女が率いるチーム「PDIS(Public Digital Innovation Space)」の活動はすべてインターネット上で公開されている。

また、オードリーさんはデジタル大臣以外にも台湾内外の様々な団体で理事を務めており、その仕事量は想像を絶する。

「いじめは一年間だけ」エピソードに見た達観

筆者が寄稿したYahooニュースの特集記事は、特集とはいえネット媒体の記事としては珍しく、半年もの時間をかけて準備した。台湾のインターネット上に書かれていることにはひと通り目を通しているが、大部分の報道には「オードリー・タンは幼いころ壮絶ないじめにあった」と書かれており、取材前から彼女のこれまでの人生がどれだけ苦しいものだったのかに思いを馳せ、勝手に胸が締め付けられるような思いでいた。

ところが、インタビューの場でオードリーさんはあっけなく笑いながら言った。

「学校や先生、クラスメイトたちに風評被害があると申し訳ないので、これは絶対に訂正させていただきたいのですが、私がいじめにあったのは小学2年の1年間だけです。私は3つの幼稚園、6つの小学校、そして中学は1年間だけと、10年間で10の学校に行っています。何かあったらすぐに転校するので、いじめがずっと続いていたわけではありません。転校したのは私自身の適性問題だった部分もあるのです」

驚いた筆者が思わず「台湾のインターネット上では全く違うことが書かれています。多くの人が参照するウィキペディアの情報だけでも直しては?」と聞くと、即座に「ウィキペディアは『他人が発表した情報を元に、第三者が編集する場所』で、さまざまな人が編集できる空間を残しているんです。当事者は情報を編集してはならないという原則がありますから、私が情報を変えるということはしません」と答えた。

それならば筆者自身が情報を訂正しても良いかと食い下がると、その答えはこうだった。

「あなたも私を取材した当事者ですからダメですね(笑)。あなた方の報道を見た第三者が編集するなら大丈夫です」

大臣就任前からインターネット上の立法に関わる

このやり取りで、オードリーさんはとてもルールを重んじる方なのだという印象を受けた。

それもそのはず、デジタル大臣に就任するずっと前の15歳頃からIETF(インターネット技術特別調査委員会。インターネットで利用される技術の標準を策定する組織)でインターネット上の規則作りに関与したり、W3C(World Wide Web Consortium。Web技術の標準化を行う非営利団体)で通信ルールの取り決めを行うなど、国境を超えたインターネットという世界のルール制定に参加していたのだった。

彼女はそれを「インターネットには国境がないので国家という概念でこそないが、そこでしていた仕事はすべて政治のようなものだった」と語っている。台湾のデジタル大臣としての活動も、彼女にとってはそれらと同じようなこととして捉えているように思えた。

「開かれた政府」を体現する敷居の低さ

デジタル大臣という身分にありながら、人との間に壁を感じさせないのは彼女の素晴らしいところだ。

オードリーさんは毎週水曜日、台北市内の「社会創新実験センター」という場所にいることになっており、誰でも会いに行くことができる。午前10時から午後2時までは予約なしで自由に会いに行くことができる。午後2時から午後5時までは予約制で、こちらから予約を申し込める。

これは「開かれた政府」を自ら実践していると言って良い。

Yahooニュースの特集取材で、編集を担当した神田憲行・編集部デスクは、自身は多数の著書を持つ取材経験豊富なノンフィクションライターだ。そんな神田氏も自身のツイッターでオードリーさんについての感想を「取材申請して2日でOK、2時間の予定の取材時間をさらに1時間延長させてくれる。人との敷居が非常に低い。なるほど、傑物だと思いました」と語っている。

また、オードリーさんはこちらの質問に耳を傾け、それに対する情報を圧倒的なボリュームで回答してくれる。

それには深いレベルでヒアリングを行う高度な「傾聴」と、想定を超えた回答で相手に気付きを与える能力が必要だ。米アップルや台湾の電気製品メーカーBenQといった大企業でコンサルタントとして活躍するオードリーさんの姿を思い浮かべさせられた。

受け答えの速さもさることながら、話すスピードも相当なものだった。

「目の前に知の巨人がいる」そう思いながら夢中でインタビューに臨み、2時間の予定が3時間に及んだ。取材後は頭の中が情報で溢れていた。

クラウドでの記事確認に、本人が現れる

特集記事が公開される前、オードリーさん本人に内容確認を行った時のこと。

筆者はクラウド上で同時編集できる「Googleドキュメント」を使用してファイルを提出した。

すると、ドキュメント上にオードリーさんが降臨したのだ。

同じドキュメント上にオードリーさんがいる。そして降臨するやいなや、すさまじい速さで原稿を確認し、コメントを残していく動きが手に取るように分かった。

オードリーさんがコメントで残してくれた訂正箇所について、何度かドキュメント上でやりとりをすると、彼女はきっちり「解決」ボタンを押し、颯爽とドキュメントを去っていった。

小さなところまで真摯に仕事をされる姿勢に、完全に敬服してしまった。

IQではなくEQで人を見る台湾

オードリーさんが日本で紹介される際、常に取り沙汰されるのが「IQ180」というフレーズだ。だがここ台湾では「天才」という表現はされても、IQを取り上げることはあまりない。

過去にオードリーさん自身「大人になってからIQ(知能指数)を語ることはあまり意味をなさない」と語っていることが影響していると思われるが、筆者が台湾で感じる「台湾人は人物を見るときにEQ(Emotional Quality:心や感情の知能指数)を重視する」といった点も、少なからず影響していると考えられる。

どんなに頭が良くても、相手を尊重した言動が取れない人間は「EQが低い」とみなされ、台湾でここまで支持されることはないだろう。

筆者も今回紹介したようなエピソードの節々に、彼女のEQの高さを感じた。

「オードリー・タンは台湾の希望」

特集記事への感想で、「オードリーさんのような大臣がいる台湾がうらやましい。」という声を数多くいただく。

確かに、台湾人は口々に「オードリー・タンは台湾の希望」と語る。

それは彼女が天才的な頭脳や技術を持ちながらも「公僕の公僕」として公益のために身を投じ続けていることに対する賛辞だ。

オードリーさんは常に特定の団体に帰属するということはなく、官民や、意見の異なる人々がスムーズに合意に至れるようサポートするといったスタンスで政治に参加している。

それは2016年に史上最年少で入閣する前、2014年の「ひまわり運動」で民間と議会の対話をデジタル技術でバックアップした頃からずっと続いている。

そして、筆者は日本にもオードリーさんのような人材がきっと存在すると思っている。

肝心なのはそのような人材が、たとえ皆が思い描く政治家のイメージと幾ばくか違っていたとしても、より良い社会のためにその人物を起用できるかということなのではないだろうか。

オードリーさんが起用される台湾とは

台湾に移住してから「台湾は常に、手に持っているカードで精一杯戦っている」と感じている。

強国・中国の存在を常に感じ、世界から国として認められないことによる不利益を飲み込みながらもくじけることなく、自分たちにどれだけ実力があるかを国民や世界に対して示している。

オードリーさんの実績や能力に注目し、確固たる姿勢で大臣として迎え入れる台湾政府の姿からは、そのトップに立つ人々の柔軟性と、台湾の実力を高めることを最優先事項に据えた強い意思を感じさせる。

そして台湾社会も、そんな政治から目を離さずに見つめている。

台湾のリベラルな社会を守るために必要なものは支持するし、オードリーさんのように次々と実績を残す人物を起用した政府は肯定されていく。

自分と違うものを許容する社会と、国や自治体を政治家任せにするのではなく、自分たちが参加して作るのだという国民一人ひとりの強い当事者意識。

台湾は、それらが筆者自身に欠けていたということを気付かせてくれた。

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