皆さま、「インボイス制度」のことはどれくらいご存じでしょうか。
かく言う私も、これまで「インボイス制度の講習会」などで税理士さんや税務署の方の話を聞いて、弊社の仕事をしてくれているカメラマンさんたちにどのように話したら「適格請求書発行事業者の登録」をしてもらえるかを考えていました。
しかし「インボイス制度」のことを勉強していくうちに「これはおかしい」と気付き、結果的に会社として「インボイス制度反対」の意思表示をしようと決めました。
ふぉとすてっぷの写真を購入してくださっているお客さまにとっても、自身の技術と情熱で身を立てていこうと努力しているフリーランスのカメラマンが、撮影の仕事では食べていけない状態に追い込まれてしまったら、どう思われますか。ふぉとすてっぷではできるだけ同じカメラマンが撮影に伺えるように調整していますので、すでに顔なじみのカメラマンもいるでしょう。「インボイス制度」には、そのようなカメラマンさんの生活を脅かす大きな問題があります。
カメラマンさんからも「実はインボイス制度のことがまだよくわからない」という声が届いていたので、「インボイス制度に関する当社の考え方」という文章を作成し、弊社の仕事をしてくれているカメラマンさんに送りました。カメラマンさんに向けて書いていますが、皆さまも読んでくださると「インボイス制度」「消費税」に関して、何らかの気付きがあるかもしれません。つたない文章ではありますが、私も何度も推敲し、心を込めて書いたので、是非読んでみてください。
インボイス制度に関する当社の考え方
インボイス制度には反対します
今年の10月から導入されることになっているインボイス制度ですが、2023年3月末までとしていた事業者登録期限が9月末まで延長となりました。
インボイス制度の問題点がようやく取り上げられるようになってきましたが、弊社は、提携しているカメラマンさんの生活を守るために、はっきり「インボイス制度反対」の立場を表明することにいたしました。
そもそも「インボイス制度」とは、消費税の納税義務のない非課税事業者からも、消費税を徴収しようとする制度です。皆さんのようなカメラマンの方々は、多くの方が売上高1000万円以下の非課税事業者だと思いますが、今回実施しようとしているインボイス制度は、非課税事業者の方々を、自主的にあるいは仕方なく、消費税を支払う「課税事業者」に切り替えざるをえない状況に追い込んでいく姑息な制度と言えます。
消費税の負担は重すぎる
売上高1000万円以下の事業者が何故、非課税事業者とされてきたかということですが、端的に言えば「消費税を払えるはずがないから」です。
消費税は【事業者に納税義務がある税金】です。弊社は課税事業者ですので、現状では年に3回、消費税の請求がドカンときます。日常生活の中では「消費税は消費者が支払っている」という感覚がありますが、正しくは「消費者は、事業者が納税義務を負っている消費税の額を転化されているにすぎない」のであって、【消費税は預かり金】という説明は誤りだそうです。
また【商品やサービスの価格】が【適正な経費、利益、消費税額等が上乗せされた適正な価格】かどうかということはまったく次元の違う話で、実際の価格は市場の競争原理や取引先との力関係で決まります。
消費税は【売上から課税仕入れを差し引いた額の10%】が課税されますから、【売上から課税仕入れを差し引いた額】というのは、【利益と非課税仕入れの合計額】と同じことになります。【非課税仕入れ】のほとんどが【人件費】ですから、つまり課税される消費税額は【利益と人件費の合計額の10%】ということで、赤字であってもかなりの請求がきます。
ちなみに皆さんに弊社が支払っている撮影料は【外注費】で、弊社にとっては【課税仕入れ】です。ですから、これまで皆さんに支払ってきた消費税額は、仕入れ税額控除ができました。ところが、インボイス制度が実施されてしまうと、非課税事業者が発行する【登録番号がない請求書】では税額控除ができなくなるため、非課税事業者と取引している会社が、彼らに対して「登録番号を取得して欲しい」とお願いするような流れになっていくのです。
消費税支払い額は手取額の10%
話を戻して、皆さんが登録番号を取得して課税事業者になった場合、どれくらいの消費税額が請求されるかですが、ざっくりと【手取額の10%】になると思います。当然、源泉税も住民税も払った上での話です。
上の図は、弊社の課税仕入れと非課税仕入れの比率を元にして作りましたが、カメラマンという仕事の場合、売上に占める課税仕入れの割合はもっと少ないはずです。
奮発して撮影機材を更新した年などは、仕入れ控除が増えるので消費税の支払いをその分減らせますが、生活のために経費を節約して手取額を確保した年は、容赦なく【手取額の10%】の請求が届きます。だから「払えるはずがない」と思うのです。事実、消費税の滞納はとても多いそうですが、その理由は「赤字でも税金が発生するから」です。
税金は本来「あるところから取るべきもの」で「無いところから取ろうとする」ことにそもそも無理があります。これでは格差是正どころか、今後も格差がさらに広がるでしょう。
インボイス制度反対に右も左もない
私自身、今回のインボイス制度を勉強する中で、「消費税」という税金の悪質さ、不公平さを理解できました。そして、日本経済が【失われた30年】から脱却し、景気好転、中小企業の給料アップにつなげていこうとするなら、もっとも効果的なのが【消費税廃止】だという確信に至りました。
【消費税廃止】などというと「できっこないでしょ。何言っちゃってるの?」というのが今の空気感かもしれませんが、少なくとも【インボイス制度反対】に関しては、明日の暮らしに関わる話で、右も左もなく、誰もが支持できるはずの問題です。インボイス制度の問題点が世の中に広く知れ渡り、世論が盛り上がってくれば、自民党の議員さんも無視できなくなるのではないでしょうか。
今のところ国は、「消費税を払う余力がないような事業者はなくなってもいい」と考えているようです。インボイス制度が予定通り今年の10月に実施されるとして、経過措置期間(最初の3年間は8割、残りの3年は5割の仕入税額控除ができる)がありますから、取引会社との交渉で6年間は何とか生き残れるかもしれません。でも一切仕入れ控除ができなくなる7年目からも非課税事業者でいられるのは、一般消費者相手の撮影がメインの一部のカメラマンさんだけ(そういうカメラマンさんがいるのかしら?)でしょうか。
自分にできることを考えましょう
ここまで読んでいただいてありがとうございます。インボイス制度の実行まで、まだ半年あります。半年しかないという見方もできますが、この半年の中でどれだけ「インボイス制度」のことが世の中に知られていくかが重要ですし、とりわけ皆さんのような個人事業主の方々はまさに「自分ごと」ですから、カメラマンさん仲間の中でもっと話し合っていただきたいです。
また、取引されている業者さんとの関係で「すでに登録してしまった」という方もおられるかもしれません。その方々にはひとまず「登録の取り消し」をお勧めします。
そのような問い合わせが増えてきたからか、国税庁のホームページに「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」が用意されています。
※上記の届出書は制度実施後の「取消し」で、実施前の取り下げは、決まった様式がないそうです。失礼しました。自主的に作成されている様式(全商連)はこちらです。
少なくとも、まだ半年の「抵抗期間」があると考えれば、「登録者数が伸び悩む」ことも重要で、最低でも「インボイス制度実行延期」の可能性は小さくないのではと期待しています。
弊社はこれからも、保育園、幼稚園の保護者の方々に、お子さまの成長の感動と記録を届けていきたいと思います。そのためには、弊社の業務に共感し、真剣に撮影をしてくださる皆さま方の力が必要ですし、皆さまの経験値やお仕事の質が上がるのと合わせて、お支払いする撮影料も増額されるべきと考えています。
皆さんのようなカメラマンを始め、デザイナー、演劇人、音楽家、プログラマー、芸人、画家、声優、アニメーターなどのフリーランスで活動している方々、また、飲食店や小売店、雑貨店、個人タクシーなどなど、大きな影響を受ける事業者はたくさんおられます。
私も微力ながら、自分にできる抵抗をしていこうと思います。皆さまもご自身にできることを考えていただきたいと切に願っております。
2023年3月28日
株式会社ステップ 代表取締役 嶋 雅明