本紹介

本田宗一郎著『俺の考え』を読んでみた

LINEの元社長、森川亮さんのオフィシャルブログを見て、このブログでも読んだ本の紹介を再開しようという気持ちになりました。

森川亮さんとは高校の同学年なのですが、クラスも部活も違ったので在校中はまったく面識がなく、その後のご活躍もネットや本で存じ上げているだけです。それでも同じ高校出身の有名人がいるのは嬉しいものですし、励みになります。他にも、俳優の三上博史さん、ミュージシャンの小沢健二さん、元プロ野球選手の小林至さんなどが先輩や後輩です。

以前、毎日このブログを書いていた時はネタ探しに苦労し、読んだ本を紹介することもありましたが、再開する【本紹介】はどのような方式にするか考えました。一つは、過去に読んだ本であっても、生き方に大きな影響を与えてくれた本、励まされたり元気が出た本、事あるごとに何度も読み返している本を紹介しようということ。もう一つは、私が解説するのはおこがましい上に、その能力もないので、特に素晴らしいと思った文章・文節を抜き出して紹介しようかと。

このブログの【本紹介】を見て、一人でも「読んでみたい」と思ってくださる方がいたら嬉しいですし、もともとこのブログは「ふぉとすてっぷがどんな会社か」「社長がどんな人間か」が伝わればいいと思って始めたので、世間の書評は気にせず、私が一番いいと思った部分を紹介することにします。紹介する部分を絞る作業が難しいと思いますが、ひとまずやってみましょう。

きっかけは『ニワトリを殺すな』

前置きが長くなりましたが、今回紹介するのは、本田宗一郎著『俺の考え』。読んだ文庫本は平成4年刊行でしたが、オリジナルは昭和38年刊行!で私が生まれる前に世に出たエッセイ集です。

本田宗一郎著『俺の考え』

仕事をする上での座右の書にしてほしいと、先日、ケビン・D・ワン著『ニワトリを殺すな』という本をスタッフにプレゼントしたのですが、この本の主人公のモデルが本田宗一郎氏でした。ならばご本人のことをもっと知りたいと『俺の考え』を読んでみて、「惚れ惚れするほど、謙虚なのに豪快、かつ繊細な人だ」と感服しました。紹介する部分を絞るのに悩みましたが、2箇所書き出します。

失敗が成功の土台だ(158ページ)

 人間は神様ではないから、すべてをお見通しのような器用なことは到底できない。あっちへぶつかり、こっちへぶつかり、人に叩かれたり、柱へ頭をぶつけたりしながら、手さぐり、足さぐりで前へ進んでゆかねばならない。
 私の過去などは、現在を成功というならまさに失敗の連続で、失敗の土台の上に現在がのっかっているようなものである。
(中略)
 世の中は技術や科学の世界と違って多少ごまかしはつくけれども、それでも失敗が発展の土台を築くことにはなるようである。人は坐ったり、寝たりしている分には倒れることはないが、何かをやろうとして立って歩いたり、駈けだしたりすれば、石につまずいてひっくり返ったり、並木に頭をぶつけることもある。
 だが、たとえ頭にコブをつくっても、膝小僧をすりむいても、坐ったり寝転んだりしている連中よりも少なくとも前進がある。大怪我をして病院へかつぎこまれて、たとえ振出しに戻されたところで、この次はあんなヘマをやらずに駈けてみせよう、という意義のある経験にはなるわけだ。
 だから、往々世の中では坐ったり、寝転んだりしている人間がケガをしたりコブをつくったりする人間をみて嘲笑するようなことがあるけれども、これは大変お門違いなことである。そういう連中は最後には嘲笑されることを知らぬバカ者なのである。

智・仁・勇の経営者(166ページ)

 中小企業の経営者をみていると、大体二つのタイプに分けられるようである。一つはいまいったガムシャラに働く実行型であり、もう一つはやたらに肩書だけにこだわり政治的に解決しようとするタイプで、この二つとも行き過ぎである。
 実行型でバリバリやるけれども、ザルから水をこぼすような人は、いわゆる経営を知らぬ人で、森の石松のような悲劇を招きやすく、肩書主義の人も、「俺は社内のことより社外の仕事で会社を助けているんだ」といいながらただ失敗を糊塗したり、金繰りに憂き身をやつすだけで本質を忘れる愚をおかしている。両方とも浪花節である。
 こういう人の下にいる人は気の毒である。蛇が頭を右に振れば尾は左へ揺れるようにいつも真っ直ぐには進めない、振り回されて一生を送る運命を担わざるをえないのだ。
 人間は智、仁、勇を備えることをもって最高の人格と考えられるが、経営者たるものは知恵、知識だけではだめ、仁と勇の浪花節だけでもダメ、三者が渾然一体になってはじめて一級の経営者といえるのである。大企業であれば、経営者に智、仁、勇が欠けていても、多くの人材がこれを支えてくれるが、中小企業はその支えがないだけに経営者は辛いわけである。
 しかし、従業員を大切にし、希望ある仕事を与えることができれば、仕事を前進させるアイデアは自ずとして湧き出し、その成功は期して待つべきである。

 

 

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