皆さま、おはようございます。保育園、幼稚園写真のふぉとすてっぷ、代表の嶋です。
昨日の神奈川新聞に思想家の内田樹(うちだたつる)さんのインタビューが掲載されていて、本当にそのとおりだなと思ったので、今日は真面目な内容を書きます。まずは内田さんのインタビューから抜粋してみます。
----世の中の仕組み全体があまりにも複雑になってしまって、人間の知性で制御できる限界を超えてしまった」と内田さんは言いました。それは、日本にも共通しているように思います。
急速なグローバル化のせいで、外交も経済政策もエネルギーも食料も、すべての重要政策は世界中の無数のファクター(要素)と関係することになりました。仮に国内でまともな政策を実施しても、どこかで戦争が起きたり、テロが起きたり、パンデミック(世界的大恐慌)が起きたり、国債や株の暴落があれば、日本経済もたちまち行き詰まる。世界中がグローバル化してつながったせいで、国民国家の内部的な政策判断と、その正否の間に関連性が低くなってしまった。米国大統領選や、欧州連合(EU)の政策や、中国の政情に日本は関与することができません。でも、よそで起きた出来事が日本の統治システムを根底から揺り動かしてしまう。制御不能の範囲に制御できない事柄が無数にある。そうなると、人は細かい手仕事で、統治システムを微調整する意欲を失ってしまう。
----日本を含め、世界はどうなってしまうのでしょう。
「面倒だから話を異常にシンプルにしようという動きが出てきます。『話を簡単にしようぜ』『白か黒か』『イエスかノーか』と。複雑な事象がシンプルな二元論に還元されると、われわれはほっとします。そして『プランAは100%正しくて、プランBは0点だ』と自信ありげに断定されると、それにすがってしまう。『難しい問題なので軽々に答えが出せない』と悩ましげに言う人より、『この道しかない』と気楽に絶叫する人に付いていってしまう」
----これまでも今回の参院選でも安部晋三首相はしきりに「この道しかない」と繰り返しています。
「首相の言う『この道しかない』は一国レベルでは処理できないグローバル・システムにこのまま突っ込んでゆくことを意味しています。消費増税の延期の言い訳で分かったように、一国レベルの政策判断の適否と、国の運命の間には連関がない(外部からの干渉で万事が変わるから)という言い訳を通してしまえば、あとはもう政治的ニヒリズム(虚無主義)しか残りません。どんな政策的失敗をしても、すべては『制御できる範囲外で起きた出来事のせい』で言い抜けられるからです。どんな政治的失策についても、政府は責任を取る必要がなくなる」
「現に今の日本政府内部に、わが国がこれからあとどのような悲劇に見舞われても、自分の責任を問う人はほとんどいない。全員が『誰かのせい』にして、それをののしり、排除することに血道を上げるはずです。でも、異常なグローバル化の進行によって、自分たちの運命を自分たちで決定することができなくなったという無力感とニヒリズムは世界共通のものです。英国のEU離脱もその一つの表れとして見るべきでしょう」
----安部首相は「アベノミクスは途上なので、アクセルを吹かす」とも言っています。
「われわれは先の見えない暗闇の中を歩いているようなものです。そういうときに『アクセルを踏んで突っ込め』と言う人と、『足元をよく見て、一歩ずつ進もう』と言う人がいたら、常識的に考えたら、誰でも後者に理ありとするはずです。『この道しかない』って、そもそもその道がどこに向かうか誰にも予見できないんですから」
----危険ですね。
「先行き不透明な時代を歩くのは、闇夜を歩くのと一緒です。手探りでゆっくり進むしかない。ここでアクセルを踏むなんて自殺行為です」
----私たちは何を考えればいいのでしょうか。
「とにかくスローダウンです。状況が分からないときには足を止めて、何が起きているかを見る。『石橋をたたいて渡らない』。手もとにある貴重な国民資源をイチかバチかのバクチに突っ込むようなことは決してしない。当たり前です。外光もエネルギーも教育も医療も、先行事例をよく研究して、『これはうまくいきそうだ』と分かったやり方をそろそろと導入する。冒険的な企てに踏み込むべきではありません。特に、いまの日本の政治指導者たちはみんな不機嫌です。人間、機嫌の悪いときに下した判断は必ず間違うというのは、畏友、名越康文先生の至言です」
だいぶ長々と引用してしまいました。これでも半分くらいは削ったのですが、自分の言葉で書くのが難しかったのでお許しください。
安部政権下での改憲に反対する人が賛成する人を大きく上回っているという一方で、参院選では改憲4党が3分の2を確保する状況だと報道されています。「なんで?」と思いますが、これが現実なのでしょうか。「痛い目に合わないとわからない」という見方もありますが、その「痛い目」は相当のものになるでしょうから、やはり「痛い目に合わない方策」をちゃんと考えなければいけないと私は思います。今日の朝のミーティングでは「選挙に行きましょう」という話をするつもりです。
私はせっかちな性格で「エイヤ!」とやってしまい、失敗することもよくあります。でも、思い切ってやってみたおかげでうまくいくことも結構あるので、どちらかというと「やってみてから考える」ということを信条にしています。でも誤解のないように言わせていただくと「何も考えない」で行動するわけではなく、「いろいろ考えてみるけれども、最後はやってみる」という感じです。だからこの選挙も「ふぉとすてっぷ」のスタッフには「ちゃんといろいろ考えてみて、完全に自信がもてなくてもベターな選択肢を選んで投票する」ということを訴えようと思います。スタッフがこれまでどのくらい投票しているのか、棄権しているのかなどを聞いたことがありませんが、今回ばかりは、これまで選挙に行かなかった人たちが少しでも考えて投票行動に出ない限り、いよいよ大変な事態が迫っていると思います。
「どうにでもなってしまえ!」と決して投げやりにならないで、内田さんがいうように「とにかくスローダウン」が大事だと思います。イギリス国民もかなり後悔しているようですが、国民投票の結果を取消すことは難しいでしょう。今回の選挙も同じです。改憲のとっかかりは「緊急事態条項」だそうですから、いよいよヤバイ(私の「ヤバイ」は「まずい」とか「ひどい」とかの否定的ニュアンスです)のです。慎重に考えて行動する人が増えることを祈ります。